夢じゃない

たしかに、同じ四角の中で暮らした。
苦しかったあの日ぎゅってしてと言ったら応えてくれた。
息が少し白い四角の中で笑っていた。
ときどき体温を交換しながら眠ったことを、今でも思い出話にして蘇らせる。



二人でいた一日のうちの数時間がなにも嘘じゃなかったって、ときどき思い出話をする。

ふっと、あの人を見るときっとあれは憧れからみた私の夢だったのかもしれないと思う。

でも、決してあいまいにはしなかった。
本当だったんだと、あの人自身がしぼんだ私に息を吹き込む。

また戻りたい。今度は永遠になるよう、そこへ行きたい。
二度と私がしぼむことがない永遠が欲しい。

きっと笑って暮らせる。

紐の端と端を結ぶだけのこと
固く結んだ紐を解くこと

簡単なことができないのはどうして。私は逃げてるからだろうか。

ぶらんにゅーとぅもろー

あと1年したら

本当に生まれ変われるのだろうか

わたしがいくら脱皮をしても叶わないのだろうか

数十年という過去をすべて受け入れられるそんな人間がいるのだろうか

新しいわたしだけを見てくれる、そんな人とこれから出逢えるのでしょうか

ひとりで生きていけないのはわかってるけど

人を求めこの先を歩き続けてるうちにきっとわたしは力尽きてひとりなんじゃないだろうか

なにもかも終わったら家族のもとに帰れるのだろうか

なにもかも終わったつもりでもまた新しい内戦が始まるんじゃないだろうか

いくつかあった道も閉ざされて

結局孤独な人生を

無意識に続けるんじゃないだろうか

本当は苦しいとか、辛いとか

本当の弱さを出し惜しみしないで済む場所ができるだろうか

張り詰めた糸が切れたとき、何も感じない人になってしまうんじゃないだろうか

ただ与えられた寿命を終えるだけの

淡々とした時間が流れてしまうんじゃないだろうか

死にたくないくらい誰かを愛せるときがくるだろうか

子を授かったり

幼いころ描いていた老い方をするだろうか

わたしだけの特別な体温をいつか感じる日はくるだろうか

本当にわたしは明日、死を迎えてもいい様生きてるんだろうか

夢のバケツにしばらく蓋をして

自分と向き合うと怖いことばかり、答えは未来にしかないことばかり

知りたいことは遠くて

わたしは真っ暗になる

Happy Birthday to My BEST firiend

16歳の冬、なんとなくはじめたバイトで出会った。
とっつきにくい雰囲気で、無口で、きっと仲良くなんかならないんだと思っていた。

一枚の紙を渡され、厨房で働く男の子に渡してほしいと頼まれたのがきっかけで
私は永遠の友を手に入れた。

学校だって違うのに、まるでずっと小さいときから仲がよかったみたいに毎日一緒にいた。
猫が好きで、ロックが好きで、恋をたくさんして、でもあのときから一番大好きだった。

制服を脱いでも変わらず一緒にいた。

なんでも話して、仲がいいだけではなく支えあって大人になった。

少し大人になった彼女は先に嫁いで行った。まるで恋人を奪われたような気分で心から祝福なんてできなかった。

私はこれから誰と遊べばいいの?誰に相談したらいい?誰に弱音を吐いたらいい?

今でも、今だに私たちは心の制服は来たままだ。
全然変わらない。同じことで笑って騒いで、同じものを見てる。
一緒にいる時間は減ってしまったけど、時々会うとなんだかお互い照れてしまう。
遠距離恋愛の恋人同士みたいに、はにかんで、言葉を切り出すまでに時間が必要。
いつもの調子を取り戻すころにはさよなら。

電話をいつまでも切れなかったりするのと一緒で、彼女といると1日がとても短い。

明日も会えますように、死ぬまで大好きな人同士でいられますように。

24歳になったね。
大人になって、おばちゃんになって、おばーちゃんになって

骨になるまで

いや、あっちの世界でまたゲラゲラやろう。

きっと死んでも大好きなアイツ。

これからもよろしくね。

※はじめて、親友に告白をした。「大好き」と初めて言ったんだ。

虎視眈々

そういうことではなくて。
接近戦に弱い。

忘れていた匂い

カウンター越しにしか見なかった手の形

それが今、私と並んだ。

冗談でも、無意識でも失神しそうだった。


なんでも知ってる

私の乾いたところを潤してくれる

誰にも話さないことを私に話してくれる

あの人の愚痴は、うれしくてたまらない。

笑った顔も好きだ。


私にだってわかる。いくらなんでも幻想ではないのはわかる。
本当にリラックスした顔を見せてくれるのが何より幸せだ。
それだけで今は、お腹いっぱいになるようにしていたんだ。

それが今日

あの日以来、近づいた。

私の肩に顎がのり、ひげの生えた頬の香りが一気に嗅覚を刺激して
私の背中に広がる体温、大きさの違う指が地図の上に並んで

地図を凝視する振りで精一杯だった。
帰り道、一歩一歩自宅に近づくたび、気持ちが膨らんでいった。
押し込んで蓋してた恋心が、また鮮やかに色づき始めた。


また少し、抑えられない。
好きな人に好きになってもらいたい、ただそれだけのことで苦しむのね。

愛の売り時

くちびるを食べあうキスなんて。

あなたの顔を包むように垂れた私の長い髪で、世界は遮られた。

髪の隙間から洩れるわずかな光を吸い込むあなたの瞳に、夢中になっている私が映る。

黒い小さな二人の世界はあっという間に現実に引き戻される。

汗という雨が二人を濡らしても、心までは滲みない。

身体は砂漠。

繋ぐ手が灼熱でも、幻。

ゴムの膜が魅せる夢の時間。

粘膜も体液もオアシスではなかった。

笑顔で交わした言葉が今日も私のお金になる。

私は最低

最悪

だれも傷つけずに済む人生なんて何度生まれ変わっても不可能である。

ただ自分が傷つかないように人を傷つけていた。

痛かったろう。あの人はわたしの言葉のナイフでどれだけの血を流したんだろう。

ただ謝ることしかできない。

「若かった」なんて笑える過去になればいいのに

あの時はただ必死に一人の人を、家族以外の人を、壁にぶつかりながら愛した。

愛し合うということ

赤の他人同士が築き上げる愛とか絆をはじめて感じた。


私は一生忘れない。
大人でも子供でもなかったあのとき。
はじめて成長し愛を知り愛されたとき。
喜怒哀楽をともにできた、はじめての人。
一方通行ではない、心のキャッチボール。

そして愛は憎しみに変わると知った。

今でも愛してる。私は彼を愛している。19のままのわたしで愛している。

思うようにならずつらく、憎く、切なく、人々はつれない

憂いのとき



目くばせをして行き交う人をたどる



薔薇の香りがわたしを包んでも



風が吹かないからだれにも届かない



この夏、わたしは汗をかくのだろうか



はちみつに似たあの汗を



ピンクに火照る肌を


誰に魅せよう