愛の売り時

くちびるを食べあうキスなんて。

あなたの顔を包むように垂れた私の長い髪で、世界は遮られた。

髪の隙間から洩れるわずかな光を吸い込むあなたの瞳に、夢中になっている私が映る。

黒い小さな二人の世界はあっという間に現実に引き戻される。

汗という雨が二人を濡らしても、心までは滲みない。

身体は砂漠。

繋ぐ手が灼熱でも、幻。

ゴムの膜が魅せる夢の時間。

粘膜も体液もオアシスではなかった。

笑顔で交わした言葉が今日も私のお金になる。