世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んでる映像をTVとネットの画像で同時進行して眺めていた。
君とは電話をしながら「映画じゃないの?夢じゃないの?」ってパニックになりながら話した。

その夜上野駅で待ち合わせをして久しぶりに会う約束をした。
柱の影に隠れるように待っていた君は、異常な痩せ方をしていた。思わず眉間にしわを寄せてしまった。

「なに、その格好」
「なにって、レイパンだよ。新しいの買った。いいでしょう」
そんな、君の身に着けているものなどどうでもいい。その痩せ方はなんなんだと訊いてる。
へへっと軽く笑うだけで特に答えない君。
その体を見るだけでほとんど見当はついていた。

「ねえ、私と付き合うならドラッグやめて」
「うん、わかった」
それからすぐに君は悪いもの、私の嫌がるものすべてを捨てた。
私も君以外のものすべてを捨てた。何も怖くなかった。
君のすべてが私の言葉で変わるのなら、私は君のためにすべてをささげようと思った。

肌という肌が蒼白で目の焦点を合わせるのも少し難しそうな、誰が見ても普通じゃないのは丸わかりだ。
奇抜な格好と少し震えているような動きの体でも、その目は確かに優しくていとしかった。

後にも先にも愛してると言えたのは君だけだ。