おもいでほろほろ

ここ2,3日あのひとのことで頭がいっぱいだ。

煌びやかな街の灯りをみあげて歩いたこと、一緒に音楽を聞いたこと、寒い夜にあたためあったこと

笑った顔

もう忘れそうな声

数えられるくらいしかしなかったキス

私を慰めてくれ励ましてくれ叱ってくれ私の思いを受け止めてくれ返してくれたあの日々。

まだ呪いは解けない。

自分から好きになった人だからこそ体の奥の奥にこびりついたいとしさとか思い出は儚いけれど記憶からは消えない。
きっと今度会うのが最後だろう。

もう触れ合うこともあの人の前で泣くこともぶつかり合うこともない。

もう二度と。

声にしていえるのなら、I miss you.

2人のため、世界はあるの。その世界でランキングはありえない。どこかの歌じゃないけどナンバーワンじゃなくてオンリーワンだ。オンリーワンからナンバーにしたのは、この世界にもって行くものを絞れなくていろいろ持ち込んだ君が悪い。お財布も、洋服も、枕も、ドライヤーも、パソコンも要らないんだよ。ここは。
私は、君がいればそれでいい。

長くゆるやかな時間は眠くなるまで話し続ければいい、話の途中で眠くなったら目覚めたときに続きを聞かせようじゃないか。お腹が空いたら何かいっしょに見つけに行こう。汚れてもどうせ一緒に汚れるんだからいいじゃないの。疲れたら私の膝で眠ればいい。髪を撫でるよ。無敵だよ、2人のため。世界はあるからさ!

私が手ぶらなのは、これから一緒に何か作れればいいと思ったからだけど。今日は雨が降っている。ずぶ濡れの私を横切った君は傘をさしていたね?傘なんてなんで持ってきたんだよ!私だけ濡れるの?髪の毛もぐしょぐしょになるの私だけ?
何か違う事されると不安になるのはこの世界は二人だけじゃなくなったから。傘をさす君は、私が涙を流しているなんて気づかないのだ。
雨に濡れないようにするなんて、ずるい。
せめて相合傘してよね。

わたしにしばしスペースを

わたしも、悪いんですけれど。
私がもーやだーーーーと言ったら「あっそ」ってなってしまうのがイヤだ。
どこまでも追いかけてきてくれなきゃいやだ。
我儘だけどそれ全部愛してくれなきゃいやだ。

いやだいやいやいやいやー。

だってやなんだもん。

そんなドラマのヒーローみたいじゃないといやだ。
察してくれなきゃイヤだ。私に敏感で居てくれなきゃいやだ。
すぐ会いに来てくれなきゃイヤだ。
いやだいやだ。

普通に日常思っていることです。

果物とか野菜とか、フレッシュなものを口に入れたい。噛み付いたときに口の中に広がるその食物が持つ水分を摂取したかった。今のあたしには彼らの生命力が必要。
動物は目や耳や脳みそがあって人間と似ているところがあるし、体温があって触れたりしてその存在を感じることが出来るのだけれど植物はちょっと違う。

陽の光を浴びて神々しく煌いてみたり、話しかけることで葉の緑が生き生き濃くなったりそういう生き物で、ちゃんと魂を持っている。

と、あたしは思って黙って静かに揺れる植物とかをよーく眺めています。
わかりやすいのがサボテンなんだけど、サボテンはただ水をやったりとか植え替えたり肥料をやったりするだけでは死んでしまう。十分に水を蓄えた葉肉を腐らして土に還り、人間で言う骨だろうか、白く艶やかだった棘を茶色く枯らして死んでいく。

いろんなサボテンがあるけどあたしが育てていたサボテンはまあるくて綿のような棘を持ったサボテンでまるい中身は脳みそじゃないかとある日思ったのだ。マニュアルどおりに世話をしながら花が咲くのを待ちわびていて、いっこうにつぼみもつけないサボテンに飽きてきたころ汚い緑色に変色して皺皺でぐんにゃりしてしまった。
どうして、どうして、と思いながら花屋で聞いてみるとやっぱり生き物なんだ、という結論に達した。
しわしわの瀕死のサボテンに早く元気になれよと強く思いながらただただ話しかけて今日は天気がいいから日光浴しようかとか、元気になったサボテンにしてほしいこと(花をみてみたい)を一方的に心で語りかけたりしわしわで元気がないのに棘だけは立派にあたしを刺すものだから放置した私に怒っているんだと思って「ごめんね」とまで思った。
少しずつ回復してきたサボテンは真夏に黄色い花を丸のてっぺんに咲かせた。それも突然!
「ほら、これがわたしの花!黄色くて綺麗でしょ?」と言っているように思えた。というか、絶対に言っていた。きっと傲慢な性格でほめてもらうことが大好きな高飛車な女の子だったんじゃないだろうか。5年後、そのサボテンはいわゆる寿命と言うのを全うして死んでいった。飽きて皺皺にさせたときとは明らかに違う、美しく朽ちた。棘ひとつ残さず土に還った。

これを経験したのが中学生のときで自宅にあるほかの植物のことも感じたり、聴診器で幹の水を吸い上げる音を聞くようになってその生命と魂を感じるようになった。
枯れたり花を咲かせたりするにはなにか理由があるんじゃないか、それは科学とかそういうものでは説明できない生き物の鼓動というか意思のようなもので気づいてあげなければただ共存する風景として時間という残酷なものに流されていくだけ。
果てしない想像に尽きないけれど、地球が誕生して生命が生まれて人類が進化していったのも基を辿れば同じなのだからその意味を忘れたり無駄にしたり見逃してはいけない気がする。人はこうして文章にしたり声にしたり、動物だって鳴き声をあげたり独特のサインがあるのだから植物だって同じように感じなくては人間でいることが罪だと思う。
植物特有の病気があったりするのも人間が病気にかかるのと一緒だ。

たとえば時間に追われて数字に追われて人間の生み出した生きるスピードに乗っている人でそれが普通になっている人もいる。空を見上げて立ち止まる人や、花を見て綺麗だと思う人や、犬に話しかける人そういう人々はきっと人が作り出した時を刻む世界と全ての生命の声が木霊する天国みたいに美しく柔らかい世界を行き来してる。
テレビだとか、マグカップだとかそういうものにまで何かを感じることはないけれど、たとえば土に根をはって生きる植物以外にも、もぎ取られた果実や野菜にも口の中に広がった果汁や何かでほとばしる最後の叫びというのを感じられずにいられないのは、私だけだろうか。
まるかじりしたときのあの満たされる感じは、人間の誰にでもないその生命に深く敬礼したい。

退屈の鐘がなる

隠し切れないその気持ちを受け取っても

声にして何度でも聞かせて欲しい。私が紅くなるまで聞かせて欲しい。



何度も流れを変えながら言葉を通わせても一瞬私は真っ白な空間に落ちる。


君が見えない。時間の流れは苦しくなるほどゆるやかで、なんど時計を見たかわからない。
適当な相槌と適度に微笑んで、私がまた流れを変える。
でも、私は夢中に言葉を吐き出す君が好きだ。目も仕草も愛おしい。

白い空間に落ちる前、鐘が鳴る。


次の約束をしなくても君は会いに来る。どんなに私が背中を向けても。



私が欲しいのなら手のなるほうへ、どこまでも追いかけてくるといい。
精魂込めて哀れんであげよう。


恋に貪欲で、愚かで、哀しい君よ

捕まえるならその力ではなく心で私を捉えるのだよ。


私のくちびるは君だけのものじゃない。残念ながら。

勘違いすれ違い

恋をしているわけではなかった。身体中にあいた穴を埋めてくれるそんな存在に寄りかかってみた。
彼はもう私を「彼女」として私に会いに来ている。

そう、毎晩。

たった5分でも、1分でも。
文字でやり取りするなら、声が聞きたくなり、最終的には顔を見たくなる。
短距離の恐ろしさを知った。

少し私の中で罪悪感が生まれた。
この数週間彼は私と過ごすためなら惜しまず財布を緩めている。

申し訳なくて、今度は私が何かお返しをしようと考えているもののそれもまた罪に罪を重ねてしまうような気がする。

それも、私の頑固なプライドのせいだが
具体的な言葉のアプローチがない限り、いつかこんなことを言うだろう。


「いつからアナタの彼女になったの?」


なんて。なんてね。


その日、その瞬間私の穴を埋めてくれる男がいれば私はどこへでもついて行く。
寂しがり屋の悪い癖。


罪悪感が生まれるということは私は彼に恋していない。
具体的な言葉がないにしろ、彼は私のことを間違いなく好きである。


ちゃんと言ったら受け止める余裕はあるが、ひとつには絞らない。
私から惚れない限りいつまでも都合のいい男なのだ。

しあわせなこと

私たちは抱き合いながらお互いの肩に顔をのせて話を始めた。

手が不自然にぶつかり合いながら歩き続けていても、あっという間に距離は縮んでいて絡みたがってる指に素直になれずに先を急いだ。ふっと同じ空気に包まれたときだけ自然と繋がる手と手が熱い。寒いといえばカーエアコンをONにするのではなくその手を私の肌に置く。

あ、っと気づいたときにはそれが当たり前のように優しくて不思議にも思わなかった。
照れくさくて「なんで?」と尋ねてしまいそうになったけど、きっと彼が触れたかったように私も触れて欲しかった。

瞳を見ながらなど、何も真実は語られない頑固な唇をしている。それはお互いに。
だから抱き合って確かめた。

声に混じって身体に響く鼓動が何より真実を訴えていた。

「帰りたくない、帰したくない」
「キスがしたい、キスがしたい」


それはそれは、長く。君が愛する赤い箱の中で。
もう家の前だというのに離れられずにもどかしい言葉だけで伝え合った。
そっと仕舞っておきたいくすぐったいことを彼が言うので、私も鸚鵡返しをした。
同じ想いだった。

ただ、離れたくない。ただ帰りたくない、帰したくない。

ただそれだけ。