部屋の扉をゆっくりと開けて

私の部屋のすぐ隣で眠る君にオハヨウを言う。大きなスピーカーと向かい合わせに君は朝に似合う音楽を吸い込むように聴いている。
手には大きなトランクを提げて。眠い目をこすりながら行き先を尋ねようとした。




「どこへ行くの?」



私の声ではなかった。
窓から差す光に包まれた真っ白な女がきっと私も出したであろう愛おしさを込めた声で訊いているのである。
真っ白な女に聞こえる程度の音量で君は行き先を告げた。
確かに私は扉を開けたはずなのに、垣の向こうのやり取りのような、スクリーンの中のやり取りを見ているような感覚に襲われた。



君が今夜何をしていようと、これからどこへ行こうと、どんな人とこれから出逢おうと私とは違うひとつ向こうの世界になってゆく。想いを馳せることは自由にできても何も訊く事はできなくなっていく現実。



行き先を告げるその前に私に目配せをした。
いたずらな目つきで、今にも泣きそうな私を流し見た。
大きなスピーカーから流れていたのは皮肉なことに、君と私が好きな曲だった。


・・・・という夢を見た。
BGMはコレだったのです。