プロポウズ

レベル30そこそこでボスは倒せないことが判明しました。


年上の友達から身辺整理をするよう叱られてしまいました。昼間に働くことになったんですけど、お人好しが最悪の事態を迎えていることに気づかずにずるずると今日まで生きてきてしまいました。お客様としていちばん長い付き合いの人でデートを繰り返していました。それはもう彼は楽しそうで楽しそうで。あたしは人の多いところは嫌いだし、お洒落なお店も嫌いだし、ブランド物にも興味はない。夜景とかイルミネーションに感動したりなんて一切しない非ロマンチスト。どんなに好きな人といっても、だ。彼は見事にあたしにとっては的外れなデートコースを仕込んでくれる。でも、嫌いではない。とても良い人柄の人だからだ。むしろ、別の出会い方をしていたら好きになったかもしれない。

前々回くらいから、彼は自分の家族の話をよくしてくるようになってなんとなくあたしも気づいてはいた。担当の好みの女から彼の恋愛対象として見られていることは少なからず、思い過ごしであってもわかってはいた。でも、確信をつく言葉はなにもないし…ヘタに早合点して自分から断るような言葉を言うのも馬鹿みたいじゃないか。
桜木町のイルミネーションは非ロマンチストのあたしでも思わず「キレイ」と口にしてしまうほどキラキラでランドマークタワー内のツリーははらはらと雪が降る演出が施されている。でも間違ってもうっとりはしない。ただ「キレイ」だと思うだけで「金かかってるなぁ」とか「考えた人すごいなぁ」とか現実的で周りの空気をぶっ壊す発言を平気でしてしまう。周りに睨まれても、彼だけはにっこり笑ってあたしの口をそっと手でふさいだ。

豪華なイルミネーションも夜中には消灯され、やっぱり夢なんてどこにもないんだって思う。寒さを余計に感じながら歩く。彼はまだあの人工の雪とかにうっとりしているような口ぶりでずっとしゃべっていた。あたしは歩きつかれてどこか喫茶店に入りたいっていうのに…
子供が欲しいとか…自分は長男なんだけど、とか…今度うちの方に来るといいよ…?

えー!!!

何を考えてるんだね?どうかあたしの思い過ごしであってほしい。あぁ、神様!!
言葉は何もなくても、匂いはプンプンしますよ。

でもあたしも悪いのです。来る者拒まずな上、正直に自分の気持ちを相手にさらすのが可哀想だと思っていつまでも相手を夢心地にしてしまった。上辺は相手を傷つけたくないと思っているけど実際は正直な自分の気持ちをぶつけた事で人を傷つけたといういやな気持ちに自分がなりたくないだけなのだ。とても嫌な人間に対してならいくらでも言えることも非の打ち所がない善人にそんなこと口が裂けても言えやしない。

便乗して結婚

それもちょっといいかも、って思った自分がいやらしい。彼の親は不動産をいくつか経営しているから経済的には問題ない、とか腹の中で実は思っていたり。愛は後で育めばいいかなーとか思ってしまったり。本当はあたしはきたねぇ人間ですばい。

好きな彼に会わないとそういう病気になってしまうんです。隙間なく構ってくれないとどこかにすぐ流れてしまうんです。



「そうやって、自分で自分の悪いところわかってるくせに、すぐ他人のせいにする!今年中に身辺整理しなさいなっ!!」
ごめんなさーい。