特効薬
なんてさっぱりしていて、いいのだろうか。
曇り空はだんだん暗くフロントガラスに迫るのにこの車が吐き出す排気にはラメが混じっていてキラキラしてんだ。きっと。
なるべく沢山深呼吸をして汚れた肺をきれいにするみたいにいい匂いをたべる。
石鹸を泡立てるみたいに手のひらは体温をまさぐる。
冷たい空気が小さい隙間から流れ込んで、おしゃべりの止まらない舌を乾かしても潤うのはビールのせいではない。
まるで私は犬のようで、あいつは猫みたいだった。
欲しい理想が手の届くところにある。なりたい理想に近づいた夜。
ただ、これも私の想いがそうさせた幻想だっていつか落胆するのだと野良犬みたいに身を硬くした。あいつだって野良猫だ。だけど毛を逆立てもせず威嚇の声をだすわけでもなく、地面にころがって腹を見せた。
やべー。罠にはまったのか?
猫のご機嫌をとるのは得意だと思っていたが。ちがうっぺー!
でも同じ目をしてる。同じ茶色の瞳をしていた。
もうどうにでもなってしまえ!