罪な願い

そろそろ新しい香水買おうかな。

 これがいい。

えー?なんか、イマドキっぽくないよぉ






テスターのCK-beがあたしの指にかかる。香水はその人の体温、体臭で香りを変える。
もしこの人があの人と同じ香水をつけて、同じ香りがしてしまったら本当に生まれ変わったんだってきっとあたしはうれしくて涙する。

あたしの左手の人差し指は、あの人の香りがする。

あたしはあの人を愛していて、この人のことは好きだ。
この人を愛する日が来るのだろうか、無邪気な瞳を見て考えた。
少し前にこの人は「誰かを愛するということは、誰かを愛さないということ」そんな言葉に感銘を受けていた。あたしはなんだかそれは悲しいことだと思って長く論議を交わした。「愛はいろんな形があるから、ひとつにはできない」あたしはこう思うのだ。
家族のことも愛している、友達だって猫だって音楽だって。いろんな愛があふれている世の中に愛することをあきらめなきゃいけない存在なんてあるんだろうか。

もうこの世に存在しないあの人を愛さなければ、この人を愛するまでになるかもしれない。あのときの彼の感銘の理由が少しわかったような気がしてうれしいような悲しいような。
でもたくさんの愛があるから人は生きていける。愛をあきらめるなんてそんな簡単なことじゃない。