思い出したこと

そういえば、昨日合コンした運送会社の社長はブラックカードを持っていました。財布といえばぺらぺらのカードケースのみ。黒光りするやつを忍ばせてサラッと会計しやがった。(やるき茶屋で)

「何食べたいか考えておいて」
なんてことを言われてあたしは真っ先に「寿司!」と元気良く答えたのに立ちんぼがたくさんいる路地のやる気のない居酒屋でした(やるき茶屋)。
「よろこんで〜」が明らかにロウテンション。どうしようもない喜び方でしたよ。


確か・・・

あたしと、あの人は一緒に住む約束をしていてセンターリビングのある2LDKの物件を必死に探していた。山下公園のそばに各部屋にベランダの付いたいい物件が見つかってあたしは彼にメールをした。そんなに年の離れていない好きな人は初めてだった。
あたしが泣いているときは髪を撫でてくれ、自動ドアですら開けてくれて先に通してくれる。満員電車の力を少し借りて初めて抱きついたときはドキドキした。怖い夢ばかり見て泣いて目が覚めると話した日一緒に眠ってくれた。酔っ払ったふりしてホテルに連れて行ってもらって、でも指一本触れずただ一度だけ軽くキスをしてくれた。古いそこのホテルは丸いベッドで酔っていたくせにはしゃいだあたしは馬鹿みたい。
3ヶ月以上も連絡を取らずに過ぎた日々はその時ばかりは重くのしかかった。

「結婚します」
彼女でなくても、女の人が妊娠してもしそれが僕の子でその人が産みたいと言うのなら僕は喜んで結婚するよ。
『良かったね』
喜びの涙に見せかけて横隔膜が痙攣するほどあたしは泣いたのだ。メールはメールボックスがパンクして確認されていなかった。
彼の結婚宣言は1ヶ月遅れのあたしのバースデイパーティーと共に行われた。


悲しみに暮れる暇など与えないようあたしは仕事に精を出し、なんとなく彼を含む仲間から遠のいて生活をするように心がけた。それでも彼は・・・
「いまから」なんて忘れた頃に突然電話をしてくるのだ。彼はあたしが恋をしていたことは知らない。ただの酒飲み友達として忘れた頃に連絡をしてくる。そして仲間で集まることは全くと言っていいほど無くなったのに、2人きりで会う回数が増えてしまった。

彼といる時間は昔の記憶を押し殺して、新しい自分でいよう。

だからあの頃みたいに満員電車に乗ることもなければ酔っ払ったふりをすることもない。ワンアームの距離を保つことで恋するあたしは眠ったまま。

もうなるべくなら会いたくないんだ。思い出すことはあるけど、それはもう思い出になったから。彼と上手くやっていけるのはあたしだけだと信じていたんだけどね。