心の砂漠 瞳の津波

あたしがどんな思いで夜を越えたのかこいつも知らない。
抱きしめてもらえたけど全然浸透しない甘ったるい感情で、遠くにあたしは飛んで行っていた。一時凌ぎでも応急処置でも何でもない。
珍しくサディスティクなあたしだったからなおさらだ。

わたしの手はあの肌の感触と、鼻はあの匂いと、舌はあの味を完璧に覚えた。黒子の数やその位置まで目は覚えている。頭はそれ全部を欲していて、耳は寝息を求めていた。

野蛮な鼾が脳みそ掻き毟った。壊れそうになりながら、なんども携帯の画面を確かめた。もしかしたら、冷たい毛布の中であの夜のあたしと同じ気持ちになるのでは?なって欲しい。と。
でも彼はきっと久しぶりの自分だけの時間を楽しんだのだ。
わたしの携帯の画面に変化はない。夜が明けても、同じだ。