幽体離脱した自分が見た最近の夏子

君の笑い方が好き。君の「もしもし」の言い方が好き。君は毎回あたしを違う呼び方するから好き。君のこと思い出してふにゃーってなってる自分も好き。メールをしても絶対電話してくれる君が好き。君に会った日はセブンスターの香りがうつる。思わずセブンスターを買いそうになった自分がかわいい。10分しか離れてない距離だからいつ会ってもいいように綺麗にしてる自分がバカだなって思う。ペンキで汚れたガサガサの手も、ジョリジョリ坊主頭も、つるつるの肌も、長い睫毛も、優しいから全部好き。
草を吸う君は嫌い。ニギリもやっちゃう君はもっと嫌い。
なるべく好きにならないように、いつでも逃げられるように考えて恋をしていた昔が嘘のようでどっぷりつかってしまおうとしてる勢いは10代の恋愛みたいで少し怖い。もしもこの恋に失敗したらあたしは泣くのかな。それとも逆ギレして文句を言うのだろうか。君は甘いものが嫌いだから、バレンタインデーどうしようかなーとか思ってるすげぇ先の未来なのにはやとちりじゃないか、あたし。今度ルーサーへ行こう。君の好きな音楽がたくさんかかるバーだよ。あたしは国産スポーツカーが好きだけど、アメ車でもいの、ドライブつれてって。お財布は汚いピンクになったけど、君からもらわなくてもいい。ディズニーランドだって友達と行くし、U2のCDも自分で買うし…君からは何もいらない。何もモノは欲しくないから長く一緒にいられればいいのだ。一緒にいられた時間ができればできるほどあたしの心は潤ってより長く一生懸命生きていられるような気がする。
親友が言った。
「片想いしてるときがいちばん楽しいんだよね」

あぁ、そうだ。言われた言葉全部が妄想の中で誇張し楽しくなっているのだ。そしていつかあたしの口から飛び出す言葉は期待した応えが確実に返ってくるよう彼の言動を読んでいる。自分の流れにのせることで有頂天になってるのは甚だ醜い。自分の都合のいいようにコントロールできるのが片想いの醍醐味か。コントロールが狂い始めたころが恋愛を目指す絶好の機会だろうし、その瞬間に彼の目の前で唇は「す」「き」って動いちゃうんだと思う。
だから!
まだあたしは恋愛してにゃーい。